ブルー・ロマン・アイロニー
「……ただの機械のくせに、人間みたいなことしないで」
「なにカリカリしてんだよ。カルシウムちゃんと摂ってるか?小魚を食えよ、小魚を」
これはわたしの知っているアンドロイドじゃない。
こんなふうに言ってくるアンドロイドなんて、飄々としているアンドロイドなんて、わたしは知らない。
仮にも今はわたしがこのアンドロイドのマスターなのだ。
それなのにさっきから物珍しくつついてきたり、顔を覗きこんできたり、生意気な口を利いてきたり。
まるでわたしのほうがアンドロイドみたいだった。
────最新型アンドロイド?いいえ、いらないわ。
思い出すなと本能が言っている。
それはわたしを傷つけるだけだと。
それでも鮮明に思い出してしまうのは、まだ伯母さんたちの一言一句に傷ついていた頃の記憶だからか。
────だってうちにはもう、アンドロイドのような子がいるもの。
……わたしは便利な道具じゃない。アンドロイドなんかじゃない。
だけどそんな扱いを受けるのはしょうがなかった。
わたしは伯母さんたちのほんとうの家族じゃなかったから。
しょうがなかったから、つらかった。