ブルー・ロマン・アイロニー


それからどうやって過ごしたのかは覚えていない。

気がつけば、寝る時間になっていた。ごく一般的な睡眠時間に。



「……ほんとうに寝てるみたい」


どの角度から見ても、人間が寝ているようにしか見えない。

壁にもたれ掛かっているアンドロイドは固く目を閉ざし、さっきまでの騒々しさが嘘のようになりを潜めている。

最初からこうであればいいものを。



────俺たちアンドロイドは睡眠を必要としねえ。が、お望みとあらばスリープモードに切り替えることもできるぜ。

────今すぐそうして。


わたしの言葉通りに、アンドロイドは律儀にスリープモードでいる。


どこから来たのかもわからない。

前の持ち主のこともわからない。

自分自身の型番も用途すらもわからない。


そんな、謎に包まれたアンドロイド。


せめてアンドロイドの性能とか用途だけでも知れたらいいんだけど。

そしたら契約を解除したときに然るべき場所に持っていけるのに。


というか野良アンドロイドを放つことはそれだけで罪に問われるから、どこかには持っていかないといけない。

近くの工場に持っていけばスクラップにしてくれるだろうか。


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