ブルー・ロマン・アイロニー
Play Human
わたしが起きると、アンドロイドはすでに目を覚ましていた。
結局、眠れたのは窓の外が白み始める頃だった。
ぼうっとする頭をむりやり稼働させるように冷水で顔を洗い、一人分の朝ごはんを作る。
「手伝おうか」
「いい。自分のことは自分でする」
「そりゃあ殊勝なこって」
というか、自分の食べるものを作らせることが信用ならなかった。
料理の腕に自信はないけれど、ロボットに作らせるよりはマシだろう。
できあがった玉子焼きは不格好で、だけど味は可もなく不可もなく。
インスタントのみそ汁はお湯を多く入れすぎて少し薄かった。
朝ごはんを済ませたら、制服に着替える。
学校指定のプレーンなブレザーに、ワイシャツの上にはオーバーサイズのニットベスト。
寒さ対策でもあって、ちょっとした個性のアピールポイントでもある。とはいえこの学校の女子ならみんなやってるけど。
ナナちゃんや瑠衣ちゃんといても浮かないように、スカートはお腹のところでくるくるって二回は折っている。
少し短いような気がしなくもないけれど、これが彼女たちの普通なのだ。
だったらわたしも寒さなんか我慢して“普通”のスカートでいる以外に選択肢はない。
玄関のところにある鏡で全身を最終確認する。
目の下にある隈はコンシーラーでなんとか抑えているし、スカートの丈もちゃんと膝上10センチ。
踵をつぶさないようにローファーを履いたあと、いい加減うっとうしいなと思いながら後ろを振りかえった。