ブルー・ロマン・アイロニー


「なにしてるの?」


身支度をしているときからずっと後ろに張り付いていたアンドロイドは、わたしの問いかけに対して、当たり前のようにこう返してきた。



「学校に行くんだろ?俺も行く」


冗談じゃない。絶対にやだ。ついてこないで。

そのどれもが、ぐるりとわたしの体内を一周した。

喉から這い上がってくることはなく、お腹の辺りをぐるぐると彷徨っている。


迷うことなんてなにもないはず。

こんな記憶喪失のアンドロイドを連れて歩くなんて、正気の沙汰じゃない。

家で大人しくさせているのが一番だ。

わかってる。わかってた。




「──────いいよ」


わかってたのに、わたしはそんなことを口走っていた。

アンドロイドのためじゃない。すべては自分のため。

わたしは、わたしの保身のためにそう言ったのに。


ぱっと顔を輝かせたアンドロイドを見て、ほんとうに一瞬だけ罪悪感が胸をよぎった。


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