ブルー・ロマン・アイロニー
……そんな顔しないでよ。
わたしは自分を守るために、利用しようとしてるんだよ。
「行こう」
「わ、ちょっと……!」
アンドロイドがわたしの手をとって家を飛びだした。
よほど楽しみなのか、階段を降りる足音がとても軽やかだった。
鼻歌まで歌っちゃって。
バカみたいと思う反面、戸惑っている自分もいる。
アンドロイドが人間の真似事をすることは嫌いなはずだった。
それなのに、どうだろう。
今のわたしは、いつもの朝よりも、気分が晴れていた。
「……駅までの道、わからないでしょ。案内するから、ちゃんと覚えてよね」
「……おう!記憶力には自信あんだ」
「よく言うよ。今までのこと忘れてるくせに」
「これからのことは絶対に忘れねえ」
ふうん、と返事をして空を見上げる。
朝の活気がじわじわと世界を支配して、あれだけ長かった夜を追い出していく。
見上げた空は、青かった。