ブルー・ロマン・アイロニー
「あまり、それってアンドロイド?」
「もろ反社じゃん。なんでこんなのにしたわけ?」
顔をあげると、そこにはナナちゃんと瑠衣ちゃんがいた。
いつものごとく、ナナちゃんは涼しげで高貴なオーラを。
瑠衣ちゃんはむすっとした表情でナナちゃんの横に立ち、蔑むようにアンドロイドを見下ろしていた。
「護身用のアンドロイドなの」
今日何度目かのセリフを繰り返す。
もちろん護衛用というのはでっち上げだ。
4つのタイプの中でいちばんそれっぽいから、護衛用ということにしている。
ナナちゃんが小首を傾げる。その拍子に肩に掛かっていた黒髪がさらりと流れ落ちた。
「なんで護衛にしたの?」
「えっと……わたしの住んでるとこ、ちょっと治安悪いから。何かあったら怖いし、ちょうどいいかなって、買ったんだ」
買った。わたしがそう言った瞬間、横から視線を感じた。
責めるような感じではなく、ただ向けただけというような視線にわたしは反応しなかった。
……拾ったなんて、言わないよ。死んでも言わない。
そのうちSHRの始まりを告げるチャイムが鳴り、担任の先生が教室に入ってきた。
席に戻っていくナナちゃんたちを見送ってから、ちらりと横を見る。
「なに?」
「別に。あれがお前の友だちか?」
「……違う」
わたしは少し考えて、こう言った。
「わたしが“友だち”なの」と。
「どっちも同じ意味じゃねえか」
わたしが返事をしないでいると、アンドロイドもそれ以上は聞いてこなかった。