ブルー・ロマン・アイロニー


そんな皮肉屋でサイアクでいいとことなんてひとつもないヤクザまがいのアンドロイドだけど、常につんとすましているわけではなかった。

目に入るものすべてが珍しいのか、初めて見ると言わんばかりに、あれはなんだこれはなんだ教えろ教えろと訊いてくる。


かばんに付いているキーホルダー、先生が持っている地球儀、お弁当の中に入っているタコさんウインナー。



「自分で調べたらいいじゃん。なんでわざわざわたしに訊くの」


アンドロイドに内蔵されているデータベースは、人間の記憶する量の何十倍もの情報を保有している。

人間を模して作られたはずのアンドロイドは、人間の記憶力をとっくに凌駕しているのだ。



「データベースはなるべく使いたくねえ」

「どうして」

「面白くないからだよ。俺はこの目で、耳で、いろんなことを知りてえんだ」

「学習型でもないくせに」


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