ブルー・ロマン・アイロニー
やっぱり夜に寝られないと、日中が眠くて怠くってたまらない。
もう慣れてきたとはいえ、この倦怠感と目の下の隈は消えてくれないんだ。
わたしはトイレの鏡にうつる、素朴な自分の顔を見つめた。
これと言って特徴のない黒髪に、そこまで大きくもない目。ぼんやりとした顔立ち。
もうほとんど薄れている両親の顔を思い出す。
わたしはどちらにもあまり似ていない、いわゆるたぬき顔だった。
目の下に頑固な隈があることで、よけいにそれっぽくなっている。
いくらメイクをしたって、制服を着崩したって、わたしはちっとも垢抜けなかった。
「……面倒くさいな」
ぽつり、こぼれた本音。
もっと見た目に気を遣うことも、明るく振る舞うことも、やろうと思えばできる。
だけど、そこまで頑張る気力がなかった。
いまのわたしに足りないのは、きっと、生きる熱意だろう。
そんなことを考えながら、教室に戻ったときだった。
わたしたちはドアの近くにあるナナちゃんの席に集まってご飯を食べている。
だから、廊下からでもたまに声が聞こえてくるときがあるんだ。
このときも、そう。
なんだか嫌な予感がして教室に入るのを少し待ってみる。
するとやっぱり、話題はわたしのことだった。
だめだよ。
いない人を否定したら女子の友情は簡単にひびが入るんだよ。
それは卵のように。
薄い殻はきっともうひびだらけだ。