ブルー・ロマン・アイロニー
「ちょっと、ねえ」
「わーるかったって。でもそっちのがバランスがいいんだよ」
「あれだけ言ったのに……」
「だから悪かったって……おい、泣くか?泣くのか?」
わたしが俯いて肩をふるわせているからか、アンドロイドが勘違いをして顔を覗きこもうとしてくる。堪えきれずにわたしは、ふ、と息を洩らした。
「ほんっとうに、なんでここまで言うこと聞かないかなぁ……ふ、っ……もう、なんなの?あなたほんとうにアンドロイドなの?わたしよりも、わたしよりもずっと人間くさいじゃん」
アンドロイドはぽかんとしていた。
わたしはくすくすと笑っていた。
だってこんなの、笑うしかない。
眉上で揃えられた前髪はたしかに今の髪型によく似合っていたし、一度もしたことがなかったボブヘアーはずっと前からしていたように馴染んでいたし。
なにより、ここまで命令を聞かないアンドロイドなんて見たことも聞いたこともなかった。