自信家幼なじみが隠すもの
幼なじみの日常
「大和くん、起きて」
微妙に暑く寝苦しかった夜の名残と微かな爽やかさが混ざる朝。
ドアをノックしても返事がないからと、少し緊張しながら部屋へ入った私。
彼の匂いでいっぱいな空間にドキドキしつつ、なんとか出た小さな声で起床を促してみたのだけど……。
「…………」
布団にくるまり身体を丸めてこっちを向いている彼は、規則正しく呼吸をするだけで私の呼びかけに反応しない。
控えめに彼の腕辺りをつんとつついてみるも、残念ながら彼が身体を起こすことはなかった。
早く起こさないと遅刻をしてしまう。遅刻をすると学校の評価に響いてしまう。
高校3年生の夏、学校からの評価ほど大事なものはない。
でも、深い眠りについている彼を無理やり起こすのは心が痛む。
それにこれ以上彼に触れると……大和くんの部屋に居続けると、息ができなくなってしまいそうで。
「どうしよう」
ベッドの脇で一人悶々とする中、普段だったら凝視できない大和くんの顔に自然と目が行った。
いつもは意地悪く上がった口角が形良く元通りになっていて、いつもは強気で自信に満ち溢れている瞳は静かに閉ざされている。
深い黒色の髪の毛は傷むことを知らなさそうに、エアコンで冷やされた空気に撫でられていた。
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