自信家幼なじみが隠すもの

幼なじみの日常




大和(やまと)くん、起きて」


 微妙に暑く寝苦しかった夜の名残と微かな爽やかさが混ざる朝。


 ドアをノックしても返事がないからと、少し緊張しながら部屋へ入った私。


 彼の匂いでいっぱいな空間にドキドキしつつ、なんとか出た小さな声で起床を促してみたのだけど……。


「…………」


 布団にくるまり身体を丸めてこっちを向いている彼は、規則正しく呼吸をするだけで私の呼びかけに反応しない。


 控えめに彼の腕辺りをつんとつついてみるも、残念ながら彼が身体を起こすことはなかった。


 早く起こさないと遅刻をしてしまう。遅刻をすると学校の評価に響いてしまう。


 高校3年生の夏、学校からの評価ほど大事なものはない。


 でも、深い眠りについている彼を無理やり起こすのは心が痛む。


 それにこれ以上彼に触れると……大和くんの部屋に居続けると、息ができなくなってしまいそうで。


「どうしよう」


 ベッドの脇で一人悶々とする中、普段だったら凝視できない大和くんの顔に自然と目が行った。


 いつもは意地悪く上がった口角が形良く元通りになっていて、いつもは強気で自信に満ち溢れている瞳は静かに閉ざされている。


 深い黒色の髪の毛は傷むことを知らなさそうに、エアコンで冷やされた空気に撫でられていた。



< 1 / 31 >

この作品をシェア

pagetop