自信家幼なじみが隠すもの
「なんで引いた目で見るんだよ。変なことを言ったつもりはねーんだけど?」
「ちょっと昔を思い出しただけだよ」
「昔?思い出して引くようなことないだろ……?」
困惑の顔を深める大和くん。
教えてあげるのは簡単だし、できることならすっきりさせてあげたいけども、正直に言ってしまったらまた睨まれてしまう未来が見えたからやめることにした。
誰しも我が身が一番可愛い。
「えっと……それよりも、残せないってのはあれだよね。なんでも胃に入れたいお年頃だから嫌いなものでも残さずに食べるってことだよね」
赤い艶々のりんごをしまおうと、冷蔵庫の扉に手をかけながら無理やりに話を戻す。
大和くんの追及の視線からも逃れられてちょうどいい。
そう、思ったのに。
「出た、天然。どうやったらそんな風に歪んで変換されるんだよ」
「……え?ふつーだよ?」
「普通じゃねーよ。全然わかってない」
「え」
私が開けかけていたはずの冷蔵庫の扉。
低い声が近くなったと思いきや、バタンっと後ろから大和くんによって勢いよく閉められた。
「ど、どうしたの」
「黙って」
後ろへと振り返ろうとする私を制止するように包み込まれる私の身体。
続いて大和くんの頭が私の肩へと重くのしかかる。
私たちの間を冷やしていた空気は大和くんの身体に押し除けられ、お互いの身体が密着するのを感じた。