自信家幼なじみが隠すもの



「よく聞いて」


 不機嫌そうな大和くんの声色。押し寄せる大和くんの香り。


 なんとなく大和くんの中に閉じ込められたみたいな……はたまた追い詰められたみたいな緊張感。


 いろんな意味で心臓がドキドキする……。


「どんだけ腹いっぱいでも、万が一失敗したものが出てきたとしても。俺は桃が作ったもの全部食べてーの」


 『食い意地張りすぎだよ』なんて茶化しはできなかった。


 大和くんの声は真剣そのもので、今までに私が感じることができなかった“私への欲”みたいなものすら感じられたから。


「桃が作るから残せないってこと。わかった?」


 こくりと私が頷けば、ピリッとした不穏な空気から一転。


 よし、と大和くんは満足そうに声を弾ませた。


 私を甘やかすような手つきで頭を撫で、安堵を含んだ息を吐く。


 つられるように肩の力を抜いていると……


「もっと自覚しろよな」


 ぼそりと呟かれた言葉。


 『なにを?』って聞こうとしたけれど、言葉にする前に唇を優しく奪われて。


 なんかもう甘すぎて、立っているのが精一杯。


 次々と与えられる熱に浮かされ、聞きたいことは全部消えていく。


 くらくらする頭でドキドキから逃げるように考えたのは一つだけだった。



 ……明日のお弁当はピーマンを抜いて、ハンバーグを増量しようかな。


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