自信家幼なじみが隠すもの
「……安心なんかできるわけねーだろ」
「桃ちゃんのことになるとほんと自信なくなるのな」
「いつもは俺様なのにな」
「気持ち悪いくらい自信家なのにな」
「殴られたいって言ってんのか?」
「違う違う。それよりも、あのことだって言えてないんだっけ?」
ドMな友人のためにぐぅーっと握りしめていた手から力が抜けた。
俺がまだ桃に打ち明けられていない、大きな秘密。
大切だからこそ嫌われたくなくて隠し続けているもの。
「……あぁ」
「あれくらいで桃ちゃんがお前のこと嫌いになるわけねーのに」
「わかんねーだろ! 最近、桃はあんまり笑わなくなったし……俺のこともう好きじゃなくなったのかも」
前は頻繁に教室へ来てくれていたけど、月日が流れるにつれてだんだんと頻度が落ちていった。
俺は牽制のために桃の教室へと定期的に足を運んでいるけど、なぜだか苦い顔をされる。
よそよそしい理由を問い詰めてみても、意外と頑固な桃は絶対に口を割らない。
同じ家にいて物理的距離は前よりも近くなったはずなのに、心の距離は開いていっている気がする。
それがたまらなく怖く、かと言ってどうしたらいいのかもわからない。
行く先が不安定に揺れる中で、秘密を桃に伝えられるわけがなかった。