自信家幼なじみが隠すもの



 ……私の彼氏はどうしてこんなにかっこいいんだろう。


 健康的な色をした、でも透明感のある肌へと吸い込まれるように私の手が伸びたとき。


 ―――ぐいっ


「わっ!」


 布団から伸びてきた手が私の手を正確に捕らえ、そのまま中へ引き込んだ。


 彼の胸の中に飛び込んだことで匂いが濃くなり、心臓が痛いほどに加速する。


「初日から寝込みを襲うとか、(もも)って意外と大胆なんだな」

「ち、違うよ……!」

「なんだ、残念。せっかく桃で遊べると思ったのに」


 耳に届くのは愉快そうに転がる声。


 伝わってくるのは私の熱を和らげるような彼の体温。


 緩く囲まれた腕は久しぶりで、与えられる全てが貴重なもので。


 こんなの、抜け出せない。全身で大和くんに抱きしめられてるみたいだもん……。


「……桃?大丈夫か??」


 ふにゃりと力が抜けた私を心配する声が聞こえたけど、返答する余裕が私にはない。


 大和くんのお父さん、お母さん。


 私にあなたのお子さんのお嫁さん役なんて、やっぱり務まりそうにありません……。



< 2 / 31 >

この作品をシェア

pagetop