自信家幼なじみが隠すもの
「でも、そうだよね。他の子を好きになるかもしれないって思うから、はっきり言えないんだもんね」
今までで一番、声が震える。
嫌だ。そんな可能性、考えたくもない。認めたくない。
声だけじゃなくて身体も震えるのは大和くんが離れていくのが怖いからか。それとも寂しいからか。
わけがわからなくなるくらい、思考が暗闇に深く落ち込んだそのとき。
「ごめん」
私の心を掬い上げるように、温めるように。
「不安にさせて、ごめん」
大和くんは私をそっと柔らかく抱き締めた。
「俺にとって“俺が桃を一生好きでいる”っていうのは当然のことなんだ」
私に『付き合うか』と言ったときと同じトーンで紡がれる言葉。
大和くんの声色が、私に本心を教えてくれる。
「当たり前すぎてわざわざ口に出すまでもないって感覚だったんだけど……そうか、周りは言わないとわからないよな。ごめん」
滅多に出さない弱々しい声は反省の色をわかりやすく乗せていて、いつもだったらうっかり許してしまうんだろう。
でも、簡単に許したくない私は責めるのを止めない。
鈍感なのは罪だってことを、身をもって知って欲しいもん。