自信家幼なじみが隠すもの
「女の子に何回も抱き着かれてるし」
「それはちゃんと引き剥がしてるぞ。最近は抱き着かれる前に回避できてるしな」
「そもそも隙を作るのが間違いなんだから、威張るところじゃないよ」
「うっ……ごめん」
大和くんの3回目の謝罪の言葉に応えるように、私は背中へ回した腕にぎゅっと力を込めた。
耳元で響く鼓動が加速したのがわかって、小さく笑みが零れる。
大和くんが私に恋してる証拠だから。
「それで、ここまできても私をあの部屋に入れてくれないの?」
「なんか今日の桃は切れ味抜群だな……?」
「大和くんと一緒に居過ぎて移っちゃったのかもね?」
「それはそれでぐっとくるな」
「なに言ってるの……」
じとっと睨んでいるとわざとらしい咳払いをした大和くんは、立ち上がって私の手を引いた。
肌身離さず持っているらしい鍵をちらつかせ、隣の部屋へと向かう。
……私には見せられなくて友達には見せられる部屋ってなんだろう。
ようやく見られる嬉しさよりも、疑問の方が大きくてなんとなくそわそわする。
「一つ約束してほしい」
「なに?」
「俺のこと、嫌いにならないでくれ」
部屋の中のものを勝手に触らないでとか、そんなにまじまじと見ないでとか。
そういうお願いかと思えばなにを言い出すのか。
部屋を見ただけで嫌いになるほどに私の大和くんへの愛が薄っぺらいものだと思われていたなんて心外だ。