自信家幼なじみが隠すもの
あの頃が一番幸せだったなぁ……。
隣の教室前の廊下でしみじみとそう感じる。
私はただ大和くんに用事があって来ただけなのに、聞きたくもない会話が耳に飛び込んできたから。
「大和~、おはよう」
「あぁ、おはよう」
「え、俺には?」
「私が挨拶したいのは大和だけだもん~。あんたはお呼びじゃないの!」
明るく楽しそうな高い声はとっくの前に覚えてしまった女の子のものだ。
大和くんの席は入口から一番遠く離れたところにあるのに声は鮮明に聞こえることを考えると、わざと周りに聞かせているのかもしれない。
ほんとのところはどうなのかわからないけど、喋ったこともない女の子の意図の裏を勘ぐってしまうのは私も性格が悪くなってきたなぁ……。
勘ぐったところで私になにか行動できるはずもないのに。
「……こいつ彼女いるじゃん。お前も知ってるだろ?望みゼロだっつーの」
「知ってるけど、だからなに? 私の方が可愛いし、大和のこと好きな自信あるから!」
「自分で言う図々しさとその根拠のない自信はどこから来るんだよ。女って怖いな……」
ちらりと教室の中を伺うと、本人も言うとおりに可愛らしい顔をした女の子と身震いをする男の子が大和くんの机を囲んでいるのが見えた。
2人が壁になっているせいで大和くんの表情は見えない。