自信家幼なじみが隠すもの



 でも、こんな会話を聞くのは初めてじゃなくて。


「なぁ大和。こいつこんなこと言ってるけど、どうすんの?」


 何回も何回も、たまたま聞いたり直接言われたり。繰り返してきたから。


 大和くんが次に見せる反応も、なにを思っているのかも。簡単に予想ができてしまう。


「どうもしない。好きにすればいい」


 大和くんがその口で可能性はゼロだって初めから言ってくれてたら、少しは平穏な日常があったのかもしれない。だけど、そうじゃないから。


 私以外の女の子の“好き”を許してしまうから。


「やったー!大和大好き!」


 ぎゅっと。


 嬉しくなっちゃう女の子は大和くん抱き着いてしまうんだ。


 ……私の彼氏なのに。


「……っ!」


 涙が溢れてきそうになるのを必死に堪え、唇を強く結んだ。


 これ以上は見ていられず、いつもと同じところで踵を返す。


 目の当たりにする光景はいつもどおり。


 私としてはそろそろ慣れてきたっていい頃なのに見る度にいちいち傷ついて、自信がなくなって……心を消耗していくのが馬鹿みたいだ。


 だけど、私は大和くんのことが好きだから。


 どうしたって嫌いにはなれないから。



 ……ただただ黙って、痛みに耐えるしかないの。



< 6 / 31 >

この作品をシェア

pagetop