自信家幼なじみが隠すもの
幼なじみの願望
「ただい―――」
「これ。なんで事後報告なわけ?」
今日も真面目に勉学に励み、重い荷物を持って帰宅した暑苦しい夕方。
期間限定の同居が決まった日に大和くんからもらったこの家の鍵を手にしてドキドキしながら玄関へ入ったその瞬間、大和くんが怖い顔をして私の挨拶を遮った。
果たしていつからそこで待っていたのか。
私の眼前にスマホを突き付けたかと思うと、今度は私が両手に持っている荷物を睨んでいる。
突き付けられたスマホの画面には、私が送ったメッセージが表示されていた。
「えっと……」
これを見てご機嫌斜めになってるってことは、もしかして大和くんの期待に添えなかったのかな……。
「ハンバーグじゃダメだった?」
「そんなわけない。俺の一番好きな食べ物は桃が作るハンバーグだし」
「それならよかった」
大好物を思い出したからか、大和くんの表情が少し和らぐ。
ほーっと息を吐いた拍子に力が抜け、スーパーの袋を持つ私の手が緩んでしまった。
慌てて力を込め直したおかげで落ちるのはかろうじて避けられたけど、ガサッという袋の大きな音は玄関に響き、大和くんの顔は再び鋭さを帯びる。
悪いことはなにもしていないはずなのに、怖くて目を合わせられない……。