自信家幼なじみが隠すもの
容姿がかっこいいだけじゃなく、裏表がなくて強気で男らしい性格もあって男女ともに人気の大和くん。
本格的に受験モードに切り替わる夏休み前、彼とともに過ごせるチャンスである放課後を狙う者は多い。
私なんかが大和くんの貴重な自由時間を奪うわけにはいかないんだ。
大和くんだって私みたいな地味で面白みもないやつといるよりも、同じクラスの仲がいい女の子と遊ぶ方が楽しいだろうし……。
それなのに、自分が決めたことに一直線な大和くんはなかなか折れてはくれなくて。
「もっと俺を頼れよ」
いつの間にか空けた両手で私の両頬を挟み、強引に視線を合わせた。
『これからは俺が桃を守ってやるからな』
小学校低学年の頃のあの日……夏祭りで大和くんとはぐれてけがをしたあのときと同じ瞳で私を射抜く。
強引なのにちっとも嫌じゃないのはその力強さが心地いいせい。
私が自ら彼を解放してあげられないのは、私に柔らかく触れる温もりに慣れてしまったせいだ。
昔も今も、大和くんのことが大好きな私は自分だけに向けられた視線と言葉に舞い上がって。
身体を満たした幸福は溢れ返り、熱として周囲を漂う。
唯一、私が大和くんを独占できる時間。