【コミカライズ連載中】姉に婚約者を寝取られたので訳あり令息と結婚して辺境へと向かいます~苦労の先に待っていたのは、まさかの溺愛と幸せでした~
思えば姉はいつも此方を馬鹿にするように笑っては見下していた。

確かに姉が持つ男性を惹きつける華やかな容姿や愛嬌は自分には無いものだろう。
けれど自慢できる優しい婚約者が居たから幸せだった。

『ありがとう』

フレデリックにそう言ってもらえるだけで幸せだと思った。
彼が側が笑っていてくれたら、他に何もいらないと……。
けれど、待ち受けていたのは"幸せ"ではなく"裏切り"だった。

震える足を動かして部屋を出た。

フレデリックが何かを言っていたような気がするが、全て無視して聞こえないフリをした。

恐らく父は醜聞を恐れて、フレデリックの婚約者をジャネットにするだろう。

フレデリックは伯爵家の嫡男だ。
デイナント子爵家とニルセーナ伯爵家は、特に繋がりもなければ仲が良いという訳ではなかった。

どちらが嫁いでもニルセーナ伯爵家にとっては構わない筈だ。
むしろフレデリックの母であるニルセーナ伯爵夫人は自分よりも華やかなジャネットの容姿を気に入っていた。

もしかしたらフレデリックもそうだったのかもしれない……そう思って考えるのをやめた。

(全部……無駄だった)
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