【コミカライズ連載中】姉に婚約者を寝取られたので訳あり令息と結婚して辺境へと向かいます~苦労の先に待っていたのは、まさかの溺愛と幸せでした~
フレデリックの婚約者になってから、少しでもニルセーナ伯爵夫人に認めてもらえるように精一杯努力していた。
彼に喜んで貰いたい一心で動いていた。
自慢の婚約者になりたかった。

少しでも"ウェンディ"が婚約者で良かったと思って貰えたらと、沢山勉強もした。
一緒にニルセーナ伯爵家を支えていく為の努力は惜しまなかった。
ジャネット程、華やかではなくてもフレデリックの隣に並んでいても恥ずかしくないようにと思っていた。

でも結局、ニルセーナ伯爵家に嫁ぐ事は出来ない。

(もう、どうでもいい……)

父や母に話をしている時も涙は出てこなかった。
ただ、目を合わせる事が出来なくて下を向いていた。

父は「……そうか」と、一言呟いてから立ち上がり部屋を出て行った。

母は言葉を失っていた。
その後「何でこんな事に……!」と、声を出して泣いていた。
その様子をただ見つめることしか出来なかった。

母が抱きしめてくれた時に、やっと声を上げて泣く事が出来た。
溢れ出した涙を拭う事すら出来ずに居た。
何も言わずに、落ち着くまでずっと背を撫でてくれていた。
今日だけはと母の胸を借りて悔しさをぶつけるように泣き叫んだ。

「ッ……ごめんね、ウェンディ」
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