姉に婚約者を寝取られたので訳あり令息と結婚して辺境へと向かいます~苦労の先に待っていたのは、まさかの溺愛と幸せでした~
「聞いて下さい……!」

「……!?」

「こ、この場所に慣れるまでは、私が自分から断っていたのです……ッ!」

「…………なに!?ウェンディが!?」

「でっ、でも、もうそろそろ寝室を一緒にしても良いかなとゼルナ様に相談していて……!そしたら、私の過去の話になってしまって!でもゼルナ様が嬉しい事ばかり言って下さるから涙が……嬉し涙が出てしまったのです!!」

「…………ウェンディ」

「本当かゼルナ……?」

「そうですよね!ゼルナ様」


ゼルナは此方の意図を理解しているのか、複雑な表情を浮かべている。
「何も言わないで」という意味を込めて、小さく首を横に振る。


「……でも、ウェンディ」

「ほう……」


その言葉にピタリと動きを止めたマルカン辺境伯は、満面の笑みを作ると「なら、今日から一緒で大丈夫だな」とゼルナにベッドを運び込ませた。

そして一瞬でダブルベッドになり、二人の寝室になったのだった。
体を綺麗にしてからをベッドに戻ると、ゼルナが寝衣で本を読んでいた。
それを見て急に緊張してしまい、カチカチのままベッドに戻る。


「ウェンディ……?」

「………ひゃい」


まるで初夜のようで恥ずかしくなり、顔を真っ赤にしていた。

(まだ心の準備が……!)

寝転がりながらベッドをぽんぽんと叩くゼルナの指示通りにシーツの中に潜り込んだ。
腫れた目元を撫でたゼルナの指に緊張して体をこわばらせた。
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