【コミカライズ連載中】姉に婚約者を寝取られたので訳あり令息と結婚して辺境へと向かいます~苦労の先に待っていたのは、まさかの溺愛と幸せでした~
「今日は……ゆっくり休んで」

「ぁ…………」

「その、今日から毎日一緒だから……い、嫌とかじゃなくて、疲れているだろうから」

「…………」

「勿論、ウェンディは、とても可愛くて女性としても魅力的だけど、今日こんな形で手を出すのは…………きっと良くないから」

「ふふ……はい」


彼の言葉から気遣いと優しさを感じていた。
その後もしどろもどろなゼルナを見て笑いながらも、少し残念な気持ちには気づかないフリをした。

それから手を握りながら、いつものように沢山話をしていた。


「あったかいね……」

「はい、とても……幸せな……気持ちになります」

「……!」


誰かの温もりを感じて眠るのは初めての経験だった。
ポカポカと胸の中が温かくなるような気がした。

全力で気持ちを吐き出して泣いたせいか、疲れてウトウトしていると、ゼルナがそっと額にキスをしてくれた。
それが本当に嬉しくて、どこか懐かしくて自然と涙が溢れてきた。

しかし話しているうちに次第に、眠気に負けて瞼が閉じていく。


「おやすみ、ウェンディ……」


そんな優しい声に包まれながら眠りについた。


「…………困ったな。今日は寝れないや」


そんなゼルナの独り言は聞こえる事はなかった。
ただ手から伝わる温もりを離したくないと強く思っていた。
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