【コミカライズ連載中】姉に婚約者を寝取られたので訳あり令息と結婚して辺境へと向かいます~苦労の先に待っていたのは、まさかの溺愛と幸せでした~
「帰って……ッ!!」

「え……?」

「ーー帰れって言ってるのよッ!」

「……!!っおい、ジャネット!」


またいつもの癇癪が始まった。
カップやスプーンを投げるのをやめさせようと手を伸ばすが、触るなと言わんばかりに手を振り払われてしまう。
侍女達に連れられるがまま、ジャネットから距離を取る。

(信じられない……!なんなんだよッ)

何かあったらアドバイスをくれていたデイナント子爵夫人には助けてもらえない。
デイナント子爵は何があろうとも基本的には見て見ぬふりだ。

ジャネットとは話ができる状態ではなく、屋敷から立ち去るしかなかった。

自分が惨めに思えて仕方なかった。
しかし、次第に怒りが湧き出てくる。

(ジャネットが婚約者になってから、何もかもが上手くいかないッ!!)

欲しがってばかりのジャネットは、常に自分に尽くす事が当たり前だと言わんばかりの態度だ。
ウェンディが婚約者だった時の居心地の良さが懐かしく感じると共に戻りたいと思っていた。

ジャネットの美しい容姿を見て、最初は喜んでいた母は最近、彼女が邸に来ると嫌な顔をするようになった。
父は「婚約を破棄することを視野に入れた方がいい」と言う始末だ。
恐らくジャネットには伯爵家を支えられないと判断したのだろう。
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