【コミカライズ連載中】姉に婚約者を寝取られたので訳あり令息と結婚して辺境へと向かいます~苦労の先に待っていたのは、まさかの溺愛と幸せでした~
何故、こんな大切な事を忘れていたのか。
本邸の存在に気付かなかったのか……自分でも驚きである。

此処に来た時から、ずっとこの辺境の地で生活していくのだと思い込んでいた。
しかし此処が別邸だと説明されたら、そうなのかと納得してしまう。
こんな基本的なことに気付かない程、今までこの生活に慣れる事に必死だったようだ。

(……社交シーズンだけは本邸、つまり王都に行くのね)

マルカン辺境伯は国王の弟でゼルナは王子達の従兄弟にあたる。
本来は公爵でもおかしくないはずなのに、好んで辺境伯の爵位を賜ったことは知っていた。
そう思うと本邸が王都にあるのは当然なのだろう。
マルカン辺境伯はいつも本邸に滞在しながら仕事をしているようだ。

(久しぶりの王都……大丈夫かしら)

その晩、マーサと共に夕食の片付けをしながら話していると……。


「こんな生活をしていると忘れてしまいそうになりますが、旦那様と坊ちゃんは王家の血を濃く引いております。旦那様と坊ちゃんの希望で此処で生活をしているのですよ」

「…………忘れていました」

「うふふ、そうだと思いましたわ」

「王都にある本邸は比べものにならないくらい豪華で煌びやかなのですから、楽しんでいらしてくださいね」

「……!?」
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