【コミカライズ連載中】姉に婚約者を寝取られたので訳あり令息と結婚して辺境へと向かいます~苦労の先に待っていたのは、まさかの溺愛と幸せでした~
(ウェンディは自分でなんとかするだろう)

何があっても笑っていた為、次第にそう思うようになり、彼女から愛情を受け取る事が当然になっていた。
困っていても、助けようともしなかった。
頬に涙の跡があり悲しんでいても、慰めた事はあっただろうか。
母に心ない事を言われて傷ついた時も、見えないフリをして助けようとしなかった。

ジャネットとの事があった時もそうだ。

(俺は……まだ、あの時の事を、ちゃんと謝ってすらいない)

それに噂が流れた時も自分の事ばかりで、ウェンディを庇おうともしなかった。

ずっと、ウェンディから愛される事が当然だと思っていた。

『フレデリック様は私が支えますから』
『私はいいんです。フレデリック様が幸せなら』
『二人で頑張って乗り越えていきましょう!』

どうしようもない喪失感と不安に駆られている。
あんなにも素晴らしい女性は居なかったと、今となっては後悔ばかりしている。


「……ウェンディ」


『ウェンディの名前を気安く呼ばないでくれないか?』

ポツリと呟いた名前……もう自分にはその名を呼ぶ権利すら無かった。



(フレデリックside end)
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