【コミカライズ連載中】姉に婚約者を寝取られたので訳あり令息と結婚して辺境へと向かいます~苦労の先に待っていたのは、まさかの溺愛と幸せでした~
(馬鹿みたい……こんな言葉を信じるなんて)

裏切られたばかりの今の自分にとっては、一番欲しているものだった。
たとえ、それが嘘だとしても。

殆ど顔も合わせた事のない男性の元に嫁ぐ事になろうとも、此処に居るよりはマシだ。

どんなに取り繕っていても心の中はボロボロだった。
それでも姉とフレデリックの前で泣かないで平然としているのは只の意地である。

(可愛くない……その通りだわ)

本音を言ってしまえば死ぬほど悔しくて悲しい。
あの時、惨めに縋っていればフレデリックの心に蟠りを残して、罪悪感を植え付ける事くらいは出来たかもしれない。
胸ぐらを掴んで頬を叩いて殴り飛ばせたのなら少しはスッキリしただろうか。

しかし、それすら自分には出来なかった。

フレデリックを愛していたからこそだろう。
けれどその気持ちを捨てて、別の所に嫁ぐのだ。

それに、また婚約者になるよりは潔く嫁いだ方がいいと思った。
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