【コミカライズ連載中】姉に婚約者を寝取られたので訳あり令息と結婚して辺境へと向かいます~苦労の先に待っていたのは、まさかの溺愛と幸せでした~
腹にドス黒いものが溜まっていく。
苛立ちに任せて、部屋にあるものを放り投げていた。
次第に"余り物"と言われるようになっていく。

そんな声を聞くのが嫌で最近はパーティーに出るのを控えていた。
送られて来る手紙は日に日に少なくなって、ついには無くなった。


「フレデリック様……!」

「ウェンディ、観劇に遅れてしまうよ?急ごう」

「はい、そうですね」


幸せそうな二人の声は毒のようだった。
バンッとテーブルを叩くと、インクが倒れて白い紙が真っ黒に染まっていく。

今更「婚約してあげてもいい」なんて手紙を送り続けた所で、誰も返事を返してくれない。

(この際、ウェンディより上の婚約者だったら誰でもいいわ!!フレデリックのような……!!……あぁ、いい事を思いついたわ)

クルリと踵を返した。

(ふふっ、無いのなら奪い取ってしまえばいいのよ……?)

真っ赤な紅を取り出して唇に塗っていく。

(わたくしが負けるなんて有り得ない)

仲良く腕を組んで歩く二人の後ろ姿を窓越しに見つめていた。
唇は綺麗な弧を描く。

(………選ばれるのは、わたくしの方よ?ごめんね、ウェンディ)

ガリっと窓に爪を立てた。

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