【コミカライズ連載中】姉に婚約者を寝取られたので訳あり令息と結婚して辺境へと向かいます~苦労の先に待っていたのは、まさかの溺愛と幸せでした~
その間に出て行けば、姉の顔を見る事もない。
なんてタイミングがいい事だろう。
それに屋敷に帰れば、此方に聞こえる様にフレデリックとの仲を自慢するのだろう。
婚約者を奪った事を気にする事なく当然のように。
外堀から埋められてしまえば抵抗する手立てはない。
社交界に多く出ていた姉は、色々な知識から悪知恵まで沢山の事を知っていた。
「お母様、今までありがとうございました」
「ウェンディ!あぁ、もう……どうして、貴女がこんな目に!!」
「……いいのです。マルカン領は遠いのでなかなか会えないとは思いますが、お身体に気をつけて下さいね。無理をなさらないで下さい」
「っ、ウェンディ……!わたくしだけは貴女の味方よ」
「はい……!落ち着いたら手紙を書きますね」
隣にいる父に何も言わなかったのは、結果的には家とジャネットを選んだ事に対しての腹いせだった。
結局、味方は母だけだった。
涙を浮かべながら母と抱き合った。
気不味そうに顔を伏せる父に小さく会釈だけして、悲しげに涙する母に「心配しないで」と笑顔を見せてから、迎えの馬車に乗り込んだのだった。