【コミカライズ連載中】姉に婚約者を寝取られたので訳あり令息と結婚して辺境へと向かいます~苦労の先に待っていたのは、まさかの溺愛と幸せでした~
先程から心臓が口から飛び出そうだった。
勢いで決めたとはいえ、やはり軽率だったかもしれない。

そんな考えを吹き飛ばすように首を横に振った。

(でも……どんな事だって耐えてみせるわ!!これでも我慢強い方だし、今まで努力だってしてきたもの)

ずっとフレデリックの為に尽くしてきた。

けどそんな未練を綺麗さっぱり捨てて、新しい道を歩むべきなのだろう。
その為の良いきっかけになったのかもしれない。

そう前向きに考える事で不安を拭おうとしていた。
二人の事は憎いし許せないけれど、それで自分の人生を棒に振るのは勿体ない。



ーーガタンッ



馬車がゆっくりと止まる。
ガチャリとドアが開けば、見渡す限りの緑が目に入った。


「お疲れ様でございました」

「長い時間、ありがとうございました」

「……いえ」


山が連なって青々しい。
冷たい空気を感じて思いきり息を吸い込んだ。

(……空気が、とても美味しい)

そして広い草原には囲いがあり、様々な動物達が間近に居る。
王都は建物ばかりで庭には木や花が沢山あるが、それとは比べ物にならない自然の量である。

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