【コミカライズ連載中】姉に婚約者を寝取られたので訳あり令息と結婚して辺境へと向かいます~苦労の先に待っていたのは、まさかの溺愛と幸せでした~
(フレデリックside)




ーーあれは、ほんの出来心だった。


幼い頃から、決まった婚約者が居た。
それを不満に思った事はなかった。

実際、ウェンディはよく尽くして努力してくれた。
ニルセーナ伯爵家の為にと勉強している事も知っていた。

様々な場所で注目を集めていたのに、彼女自身は俺に夢中でその事を知らないままだろう。
「可愛らしい」「羨ましい」
そんな言葉を言われると、まるで自分の事を褒められているようで嬉しかった。

ウェンディは真っ直ぐ此方だけを見ていた。
「フレデリック様の為に」
そう言って、沢山のものを与えてくれた。

彼女は益々努力を重ねて、洗練された仕草と可愛らしい容姿で異性の目を惹きつけていた。

しかし成長と共に気持ちが変わっていく。
以前は嬉しかったウェンディを褒める言葉が、いつからか苦痛になっていた。

最初はウェンディにつり合う自分になろうとした。

けれど、彼女はもう手の届かないところに居た。
そしてそのまま自信を無くしてしまった事をキッカケに、彼女に対しての態度は無意識に変わっていった。
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