【コミカライズ連載中】姉に婚約者を寝取られたので訳あり令息と結婚して辺境へと向かいます~苦労の先に待っていたのは、まさかの溺愛と幸せでした~
「ウ、ウェンディ……これは」

「………」

「っ、……誘われて、それで仕方なく!」


(仕方ないって何……?もう、聞きたくない)

その言葉で否定しているつもりなのだろうが、フレデリックもジャネットを抱いた事を認めているという事だ。
それに姉の誘いを断りきれなかったフレデリックも同罪ではないだろうか。

ぼやける視界を隠すように下を向いて唇を噛んだ。
感情は、荒波のように襲い来る。
手を握り込んで迫り上がる感情を飲み込んでいた。

(絶対に泣かない……!泣いたら負けだッ)

ここで泣いて怒り狂ったとしても、フレデリックに縋ったとしても、ジャネットを殴りつけようとも……彼が彼女を抱いた事実は変わらない。

『ウェンディは甘えるのが下手ね』
『少しは我儘を言った方がいいのよ』
『弱い部分を見せなくちゃ』

よく一緒にお茶をする令嬢達に言われていた言葉が頭を巡る。
この状況でソレを思い出すのは、きっと自分が今から可愛げのない対応をしようとしているからだろう。

(分かってるわ……!自分が可愛くない事くらい)

ああした方がいい、こうした方がいい。
そう言われる度に自分を否定されているような気がした。
それでも笑みを浮かべながら頷いていた。
そんな事ない……そう否定したくても、本当は自分でも分かっていたのだ。
< 8 / 215 >

この作品をシェア

pagetop