【コミカライズ連載中】姉に婚約者を寝取られたので訳あり令息と結婚して辺境へと向かいます~苦労の先に待っていたのは、まさかの溺愛と幸せでした~
ここで涙の一つを流して文句を言えば"可愛い"のだろうか。
フレデリックが戻ってきてくれるのだろうか。
泣きついたら姉は困り果てるのか……。

(いいえ……!私には何も残らないわ。泣いたって喚いたって、ジャネットを喜ばせるだけよ)

グッと涙を堪えた。
きっと目は充血して赤くなっている事だろう。
死ぬほど悔しくて吐き気がした。

けれど、何事もないようにぽつりと呟いた。


「この事は……お父様に報告させていただきますから」

「ウェンディ、俺は……!」


泣きそうな顔で此方を見ているフレデリックを睨みつけた。

(泣きたいのは……私の方なのに。何故、貴方がそんな顔をするの?)

裏切られたのは間違いなく自分だ。
そして彼は、裏切ったのだ。

今まで積み上げてきたものが、全て崩れ去った瞬間だった。
軽蔑した眼差しでフレデリックを見ていた。


「……話は、其方で致しましょう」

「もう何をしても変わらないのよ?諦めなさいよ、ウェンディ」

「…………」

「アハハ、手遅れなの!」


姉は、父に言ってフレデリックを取り戻そうとしていると思ったのだろう。
勝ち誇ったように此方を牽制している。

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