【短編】保健室の常連客
天使な常連客
キンキンに冷えた金曜日
「ごちそうさまでした」
昼休みの時間が始まって15分。空になった弁当箱に向かって手を合わせた。
弁当箱をスクールバッグにしまい、黒板の横に掛けられた時計に視線を移す。
まだちょっと早いけど、行きますか。
涼しい空気でいっぱいの教室を後にして、ぬるい風が吹く廊下を歩いていく。
……今日も来るかな。
──ガラガラガラ。
「失礼します」
「はぁい」
保健室のドアをゆっくり開けると、口をモゴモゴさせている女の人と目が合った。
「あら恵理ちゃん! いらっしゃい!」
「こんにちは。お食事中にすみません」
「いいのよ! もう食べ終わるから! 今日もよろしくね」
口元を隠したお上品な三日月スマイル。
彼女は養護教諭の石出先生。
そして私、桧村恵理は、この学校の2年生。
1年生の頃から保健委員をしていて、毎週金曜日の昼休みと放課後はここに訪れている。
< 1 / 57 >