【短編】保健室の常連客
保健だよりを先生に提出し、ようやく下校。
お互い自転車通学なので、途中まで一緒に帰ることに。
「あのさ、ずっと気になってたんだけど、どうして毎週金曜日に来るの?」
隣を歩く彼に尋ねてみた。
お客さんが少ない時は、来室表を見て時間を潰している。
そこで知ったのは、広川くんは金曜日だけ保健室を利用していること。しかも1年生の頃から。
何か理由があるのかな。
「それは、ハナキンを楽しむためだよ」
「ハナキン……?」
初めて聞くワードが出てきて、首をかしげた。
「お花に金曜日の金で花金。明日は休みだから、夜遅くまで思いっきり遊べる! って意味なんだって。バブル時代に使われてた言葉らしいよ」
「へぇ〜」
なるほど。昔の流行語みたいな感じだったのか。
つまり、週末を楽しむために、お昼寝してパワーチャージしていたってわけね。
「じゃあ俺はここで。いい花金を!」
「うん。また来週」
最後、お得意のふいうちで締めた広川くん。
思わず吹き出しそうになったのをこらえて、笑顔で別れたのだった。