【短編】保健室の常連客
軽く後悔していると、彼が戻ってきた。
先週と同じように、横に並んで帰路に就く。
「まさかここで桧村さんに会うとは。制服じゃないからちょっと新鮮だね」
「そう、だね……」
満面の笑顔でそんなに見ないで……。
あっちもジャージで似たような感じだけど、こっちは着古したヨレヨレの服だから恥ずかしい……。
「広川くんは、おつかいに行ってたの?」
これ以上は羞恥心が爆発しそうだったので、話題を変えた。
「うん。家族のお昼ご飯を買ったんだ。桧村さんは何買ったの?」
「掃除グッズ。今日、家族全員で大掃除する予定なの」
「へぇ〜」
話を逸らすことに成功し、胸を撫で下ろした。
私の家庭は、3ヶ月に1回、家族総出で大掃除をしている。
といっても、家具を動かすとかの大規模なやつではなく、窓や床を拭いたり、ホコリを取るだけの簡易的な掃除。
今年は梅雨が早く明けるかもしれないと聞いて、本格的な夏が来る前にやることにしたのだ。