【短編】保健室の常連客
サラッと生々しいことを言ってのけた広川くん。
金額が絶妙すぎて、一瞬心が揺らいじゃったよ。
「おお、想悟くん」
すると、ジャージを着た年配の男の人に声をかけられた。
「おじいちゃん! また散歩?」
「おお。今日は貴重な晴れの日だからねぇ」
和やかな雰囲気で話す彼らを眺める。
広川くんのおじいさんだったのか。
優しい笑顔と細まった目元が似てるなぁ。
「はじめまして。広川くんのクラスメイトの桧村です」
「こちらこそ。想悟の祖父です。孫がいつもお世話になっております」
ペコッと頭を下げたおじいさん。
白髪交じりだけど、髪の毛の質感もちょっと似てるかも。
「桧村さん、こないだの花金の話、あれ、おじいちゃんが教えてくれたんだよ」
「ええっ⁉」
「ハハハ。よくお嬢さんの話は聞いてるよ。仲良くしてくれてありがとね」
「いえ……」
先週に続き、またもふいうちを食らった。
これだけ仲がいいのなら、昔話とかしてそうだし。そりゃ詳しいはずだよね。
微笑む彼らを見ながら、1人で納得したのだった。