【短編】保健室の常連客
どうやらこのスーパー、火曜日はお肉が安い日らしく。
たくさん持って帰れるように、一旦荷物を置いて来たとのこと。
おでこにうっすら汗が見える。中で熱戦が繰り広げられてたのかな。
「桧村さんちは、今日は何食べるの?」
「カレーだよ」
「おお〜。ちなみに何口?」
「甘口。家族全員、辛いの苦手で。広川くんは辛いの得意?」
「いやぁ。中辛ならいけるけど、辛口は火吹く」
「わかる。口の中が火事になるよね」
曇り空の下、自転車を押しながら帰路に就く。
さっきまでは、計画が狂って、急な出費が発生して、ツイてないなと落ち込んでいた。
「広川くんは、今日はお肉食べるの?」
「うん。豚しゃぶの予定だよ。昨日もらった保健だより見たら、食べたくなっちゃって」
だけど、そんな気分も吹っ飛んで、今、彼に会えた喜びで胸がいっぱい。
早く帰るつもりだったのに……もう少しだけ、この時間を楽しみたいな、なんて。
これも広川くんパワーなのかな。