【短編】保健室の常連客
「そういえば、美味しそうって言ってたね。でも、ちょっと買いすぎじゃない? 食べ切れるの?」
「大丈夫! 余った分は、お弁当のおかずにしたり、俺とおじいちゃんで食べてるから!」
信号待ち中に尋ねてみると、新たな情報を教えてくれた。
食べ盛りの広川くんはわかるとして、おじいさんも一緒に残飯処理してるのはビックリ。
こないだの話だと、よく運動してそうだったし、食べる量が多いのかも。
「そうなんだ。いつもどのくらい買うの? 私、3人家族だから、あまりイメージ湧かなくて」
「うーん、日によるかな。今日はお目当ての物を買えたから多いほうだよ。ちなみにこのお肉、にーきゅっぱ! すごくお得じゃない⁉」
すると、キラッキラの笑顔でお肉を見せびらかしてきた。
しゃぶしゃぶ用のお肉……。今日はこれを食べるみたいだ。
「意外と節約家なんだね」
「よく言われる。こう見えて毎月お小遣い帳つけてるんだよ」
「そうなの? 私もつけてるよ!」
「桧村さんも? やったぁ! 仲間見つけた〜」
はしゃぎ始めた広川くん。
のほほんとしているように見えて、しっかり者だったなんて……。
ギャップにやられてしまい、別れるまでの数分間、話の内容が頭に入ってこなかった。