【短編】保健室の常連客
「良かったら食べる?」
「えっ」
白ご飯を一口大に分ける手が止まる。
それは、豚しゃぶ肉のこと……?
「いいの? ごちそうなんじゃ……」
「大丈夫。昨日たらふく食べたし。桧村さんにはいつもお世話になってるから」
おかずが入った弁当箱が目の前に置かれて、ゴクリと唾を飲んだ。
そうは言っても……このお肉、確か国産だった気が。
お世話だなんて、大したことしてないんだけどな。
むしろ私のほうが、癒やしとか元気をもらってる側なのに。
だけど──。
「……ありがとう」
先生もいる手前、親切を無下にできなかったので、お言葉に甘えて1枚いただくことに。
「んん! 美味しい! これ、ポン酢と他に何か入ってる?」
「にんにくが少しが入ってるよ」
なるほど。どうりで香ばしいと思った。
味が染み込んでて、ご飯が進みそう。
「お口に合って良かった。もう1枚食べる?」
「いや、大丈夫。ご飯入らなくなりそうだから。ありがとね」