【短編】保健室の常連客

「えっ……! いいの? 観たい映画あるんじゃない?」

「いや、特に。困ってたからもらっただけ。先約があるなら仕方ないけど……」



入口を塞いでいたので、一旦席に着く。

誰とも約束はしてないから、行けないことはない。

だけど。



「私はいいけど、広川くんの好みに合うかどうかが……。青春ど真ん中の恋愛ものだけど、大丈夫?」

「大丈夫! 青春もの好きだし。詳しい話は、授業終わった後でいい?」

「わかった……」



先生が来てしまい、広川くんは自分の席に戻っていった。

チラッと見えた耳が、赤くなっていたような。


もしかして、デートのつもりで誘った……?







テストが終わって次の日の土曜日。

映画館に集合時間の20分前に到着した。

彼が来ていないのを確認し、トイレで身だしなみを整える。



「緊張してきた……」



パウダールームの鏡の前で、大きく深呼吸。


どこも、おかしくない……よね?
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