【短編】保健室の常連客
顔を見て話そうとするも、焦点が定まらない。
緊張で目を合わせられないんじゃなくて、視線を奪われているというか。
「広川くん……柄物着るんだね」
何を隠そう、彼が着ていたのは、植物がプリントされた柄シャツ。
色は淡い緑で、アロハシャツほど派手ではないものの。
勝手なイメージで、無地が好きそうと予想していたから、驚きを隠せない。
「意外だった?」
「うん。一瞬見間違いかと思った」
「アハハ。これ、兄ちゃんがくれたんだ」
コーディネートの解説を始めた広川くん。
どうやらお兄さんのおさがりだったようだ。
「こういう系統はあまり着ないんだけど、前に会った時地味な服だったから、明るい色を着ようと思って。けど、ちょっと派手だったかな……」
私の服を見た後、苦い顔でポソッと呟いた。
あぁ、私が無地の服を着てきたばかりに……。
でも、あっちも似たような理由で選んだと知って、心が弾んだ。