【短編】保健室の常連客

顔を見て話そうとするも、焦点が定まらない。

緊張で目を合わせられないんじゃなくて、視線を奪われているというか。



「広川くん……柄物着るんだね」



何を隠そう、彼が着ていたのは、植物がプリントされた柄シャツ。

色は淡い緑で、アロハシャツほど派手ではないものの。
勝手なイメージで、無地が好きそうと予想していたから、驚きを隠せない。



「意外だった?」

「うん。一瞬見間違いかと思った」

「アハハ。これ、兄ちゃんがくれたんだ」



コーディネートの解説を始めた広川くん。

どうやらお兄さんのおさがりだったようだ。



「こういう系統はあまり着ないんだけど、前に会った時地味な服だったから、明るい色を着ようと思って。けど、ちょっと派手だったかな……」



私の服を見た後、苦い顔でポソッと呟いた。


あぁ、私が無地の服を着てきたばかりに……。

でも、あっちも似たような理由で選んだと知って、心が弾んだ。
< 31 / 57 >

この作品をシェア

pagetop