【短編】保健室の常連客
「一昨日のこと、詳しく話したいんだけど、いい?」
「……いいよ」
恐る恐る顔を上げると、ホッとしたような目と視線がぶつかった。
心の内を見透かされたのかと思って、さっき以上に心臓が大きく音を立てる。
何の話だろう。
お友達の話か、家の話か、それとも……。
◇
「時間取ってくれてありがとう」
「ううん。ここで大丈夫?」
「うん。人少ないし」
昼食を取った後、後ろの窓際に移動した私達。
最初は外の予定だったのだけど、今日は晴れていて日射しが強いため、教室で聞くことに。
「話そうか迷ったんだけど、桧村さんには長い間お世話になってるから。聞いてくれる?」
「っ、もちろん」
普段の柔和な表情とは違い、真剣な顔つき。
自然とこっちも体に緊張が走る。
「この前松本に、名字変わったって言ったやつ、実は……俺んち、離婚してるんだ」
固唾を呑んで見守ると、ゆっくりと話し始めた。