【短編】保健室の常連客
「物心ついた時から両親の仲が悪くて、しょっちゅう喧嘩してた。別の部屋に避難して、兄ちゃんに耳を塞がれて……」
時々言葉を詰まらせながらも、話し続ける彼。
父親の怒鳴り声に怯えながら過ごしていたらしい。
振り返れば、おじいさんとおばあさんの話ばかりで、両親の話は全く聞いたことがなかった。
「その結果、とうとうお母さんが壊れてしまった。通院してたんだけど、その後に父親の転勤が決まっちゃって。それが、小6の秋頃」
「ってことは、松本くんとは……」
「うん。本当は同じ学校に通う予定だった」
悲しいことに、中学に上がるタイミングで、引っ越さなければならなくなったんだと。
自分だけ別の学校だなんて、寂しいよね……。
「でも、父親には着いていかなかったんだよ。お母さんの通院が難しくなるから」
「えっ、じゃあ引っ越さなかったの?」
「ううん。通院しやすいように、お母さんの実家に引っ越したんだ。離婚したのは、父親が戻ってきた後。だから、3年近く別居してたかな」