【短編】保健室の常連客
父親が単身赴任から帰ってきた後、家族会議をしたそうで。
お兄さんと一緒に、胸の内を全部吐き出したという。
「『もう怒鳴り声を聞きたくない。お母さんを苦しめた人とは、もう一緒に暮らしたくない』って言ったよ」
「それで……お父さんは何て……?」
「だいぶ堪えてて、別人かってくらい、細い声で謝られたよ」
怒鳴ってた人が、別人レベルで……。
それもそうか。
子どもから、しかも2人揃って絶縁宣言。
自業自得とはいえ、ショックを受けるのも無理はない。
気の毒だけど……たった謝罪1つで、今までの苦しみが全部消えるわけじゃないもんな。
「そっか……大変だったね。別れる時は、何か言われなかった?」
「うん。別居中に反省したみたいで、ずっと黙り込んでた。離婚もすんなり承諾してくれて、めでたしめでたし。スッキリしたよ」
曇っていた表情が、少し晴れやかに。
ただでさえ話しにくい内容で、思い出すのも辛いはず。にも関わらず、打ち明けてくれた。