【短編】保健室の常連客

チャイムが鳴ったら起すよう言い残すと、ベッドに寝転んだ。

……今週は、『梅雨によるプチうつ』だったか。


彼は毎週金曜日の昼休み、お昼寝をするためだけに保健室を訪れる。


具合が悪いわけでもないのに、いいの?
と、初見の人なら疑問に思うだろう。

しかし、この習慣は今に始まったことではない。



『失礼しまーす……』

『はーい。どうしました?』



あれは1年前の初夏。今日と同じ、金曜日の昼休み。

今とは違って、恐る恐るドアを開けて入ってきた。



『少し寝不足で……仮眠取ってもいいですか?』

『あらら。どうぞ。ベッド空いてるけど、使う?』

『いえ、ソファーで大丈夫です』



私はその時、備品の片づけ中で、先生と彼には背中を向けていた。

新学期始まったばかりなのに、昼寝しに来るなんて……と、最初は呆れていた。

けれど──。



『あっ……どうも』

『……っ、どうも』



振り向いた瞬間、目が合っちゃったんだ。
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