【短編】保健室の常連客
それなのに、ツイてないって。
体調崩して休んでる人の前で使う言葉じゃないでしょ。
いくら人柄が良くても、こればかりはスルーできない。
「ワガママ言わないで。お昼寝なら、ベッドじゃなくてもいいでしょ? そんなに横になりたいなら床で寝れば?」
イライラが募り、普段より強い口調で返してしまった。
「そう……だよね。ごめん」
「あっ、待っ……」
言いすぎた。そう思った時にはもう遅く。
一瞬目を丸くした後、短く謝って出ていった。
……何やってるんだろう。
イラついてたからって、あんな言い方……。しかも保健室で。
もう少し優しい叱り方があったでしょ。
「桧村ー、ちょっと手伝ってくれー」
「っ、はーい」
武田くんの声で我に返り、くるりと方向転換。
とりあえず今は、仕事に集中して。
広川くんには、放課後、時間を見つけて謝ろう。
そう決めたけれど、声をかける前に帰ってしまい、謝れず。
帰宅した後にメッセージを送ったものの、週末になっても未読のままだった。