【短編】保健室の常連客
『作業中に……すみません』
『いえ……』
内心驚きながら、ぎこちなく頭を下げた。
入学して2週間強。
出席番号が前後で、唯一認識していた人だったのもあったんだけど……。
『はい。では次、広川くんお願いします』
『…………』
『広川くん? 聞こえてますか?』
『……あっ、俺か』
入学してすぐの自己紹介で、ボーッとしていたのか、先生にツッコまれていた姿が印象的で。
だから、まさか彼だったなんてと驚いた。
『失礼しまーす。あ、桧村さん』
『広川くん、また来たの?』
『えへへ。ベッド空いてる?』
この日を境に、彼は定期的に保健室を訪れるようになった。
最初の頃は、月に1回のペースで来てたんだけど、日が経つにつれて仲良くなり、今では毎週来るように。
寝る場所も、ソファーからベッドに変わった。
この話だけを聞くと、図々しい人。
だけど、人柄がいいからなんか憎めないんだよね。