【短編】保健室の常連客
髪の毛もふわふわしてて、顔立ちも優しめ。
人柄の良さもプラスすると、まさに、地上に降りてきた天使……。
って、見惚れてる場合じゃない。早く起こさなきゃ。
「広川くん! 起きて! 授業始まるよ!」
「うーん……」
両肩を持って激しく揺する。
梅雨の時期が憂鬱なのはわかるけど、体調が悪いわけじゃないなら授業は受けなきゃ。
「こらっ! いい加減起きなさい!」
焦りが頂点に達し、ほっぺたを突っついた。
うわぁ、なんて弾力……! 気持ちいい……!
剥きたてのゆで卵みたい……!
「ん……? 桧村さん? どうしたの?」
感触を楽しんでいると、眠っていた天使が目を覚ました。
しまった、つい夢中に……。
「どうしたのって……もうすぐ授業始まるから起こしてたんだけど」
「えっ」
我に返り、ガバッと起き上がった広川くん。
時計を見ると、もう3分を切っていた。